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この記事は2023年5月30日に更新しました。
飛行機に装着するタラップ車(パッセンジャー・ステップ車)とは?
飛行機に旅客が搭乗・降機する時に、グランドハンドリングスタッフが使用するGSE(Ground Support Equipment)車両機材を、タラップ車もしくはパッセンジャー・ステップ車といいます。
タラップの語源はオランダ語で階段のことで、 航空機に乗り入れする際に架設された構造物です。
タラップ車には2種類あり運転席がある自走式タイプと、運転席がない非自走式タイプがあります。
エンジンの備えがない非自走タラップ車はトーイング・トラクターでけん引をして、スポット(駐機場)まで移動します。
PBBの内容については以下の記事をご参照ください↓
非自走式タラップ車の取り扱いは、免許がない方でも操作可能ですが、トーイングトラクター(TT)で非自走式のタラップ車を牽引する時は、会社によって判断が異なります。
他のGSE車両機材であるベルトローダー車、ラバトリー車、ウォーター車と同様に、タラップ車も機種ごとに資格分けがされており、B737取得後はB767など訓練計画があります。
私が2006年にグラハン業界に入社した新人の頃、お世話になったベテラン先輩が飛行機にタラップ車装着後、アウトリガーを失脚しお客様が機内から降機中、すごく揺れた現象があったと聞いたことがあります。
※アウトリガーとは、多くの乗客がタラップ車を通じて搭乗・降機をする為、車体が横転をしないように安定性を施すための装置です。
幸い事故や負傷者が発生しなかったですが、重大インシデントレポートになってしまい、担当した作業員は責任を取ってタラップ車の資格がはく奪となりました。
当時はケガ人等の発生がなかったのが幸いでしたが、タラップ車が横転した場合は飛行機の欠航につながる恐れもあったので、取扱注意車両となります。
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タラップ車を航空機に装着手順と注意点
- 飛行機の機種にタラップ車を事前高さ設定。(プリセット)
- 航空機到着後、整備士の作業合図開始と共にエントリードアに装着開始。
- タラップ車を航空機装着後、アウトリガー張り出し。
- 荷台に移動し、航空機入口部分とタラップ車に段差が無いか確認。(段差がある場合は高さ調整を行う。)
- 雨除け防止のクロージャーを張る。
- 航空機のエントリードアオープン。
エントリードアのオープン操作方法は以下の記事をご参照ください↓
自走式タラップ車は飛行機の機種毎に対応できるよう、プリセット(高さ調整)ボタンで自動設定機能が備わってます。
飛行機がスポットに到着後、飛行機のエントリードアへ向けてタラップ車をアプローチしますが、運転席側からでは頭上斜め方向に飛行機のドアがあって視界も悪いです。
ボーイング767・777は、エントリードアからエンジンが離れていますが、車体の高さがある為ドア中心に装着は難しいです。
アウトリガーを張りだす装置は運転席の中にある操作パネルもしくは、外側に付随するコントロールボックスにあり、必ず張り出したかどうか確認します。
タラップ車後方から階段で荷台に上り、飛行機のドアとタラップ車に隙間の確認後、雨除けのクロージャーを覆い、CA合図にてエントリードアオープンを実施します。
飛行機のエントリードアの中心にタラップ車を装着できないと、飛行機のドアが完全に開けず安全な状態ではないので、再装着の為に一度離脱しなければなりません。
既に乗客をターミナルに送迎するリムジンバスがタラップ車に横付けされており、一度キャノピーやアウトリガーも収納しなければならず、お客様降機を待たせる結果となります。
もし、一度アプローチして駄目と判断した場合は、咄嗟に後退して再アプローチしたほうが無難です。
装着の際に誘導員を配置しますが、通常誘導員は航空機とタラップ車が装着する箇所しか見ていないため、全ての判断はドライバーの責任となります。
PBBと違ってタラップ車は、飛行機に近づくと自動でスローダウンする機能がなく、誤ってアクセル強く踏んだ場合、乗客や飛行機に事故を被る恐れがあるのでアクセルワークが大切です。
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タラップ車で車いすや足腰が不自由なお客様はどうするの?
足腰が弱く、階段の上り降りが出来ないご年配の方や車イス利用の方は、タラップ車に補助椅子が備わっており、現在はエレベーター付きのタラップ車を導入するグランドハンドリング会社もあります。
車いす用タラップ車って全てに取り付けられないンですかね?
( ˘⊖˘) 。o(待てよ,ひょっとしたら相当お高いシロモノなのかも?) pic.twitter.com/LoocqNL6eu
— える (@StLaurentdze) June 29, 2017
エレベーター付きのタラップ、大きい。エレベーターを囲む形で階段がL字型に配置されている。今までタラップ車のサイドレールにリフトが付いたのはあったが、車いすから下ろしてリフトに座らせなければならなかったが、これなら車いすのまま行ける。 pic.twitter.com/KNLQwWrWxO
— なごやん (@N682G) February 10, 2020
羽田空港の場合、PBBがないオープンスポットで車いすのお客様が発生した場合はPBL(パッセンジャー・ボーディング・リフター)を依頼します。
PBLはリムジンバスが運営するサービスの一環で、グランドスタッフが事前にPBLの手配をして、お客様をバス荷台から航空機へと搭乗する方法です。
タラップ搭乗でもR側にこういった車をつける事で車いすも飛行機に乗ることができます。 pic.twitter.com/CTacOihn8T
— このはなまる (@konohana753) June 28, 2017
車いすのお客様はPBLの荷台に乗り込み、飛行機の高さまで上昇後にグランドハンドリングスタッフがエントリードアをオープンして、グランドスタッフが席まで車いすケアをします。
PBLの仕組みはグラハンが使用するフードローダー車と同じ仕組みです。詳しい内容は以下を参照ください↓
PBL発生時のグラハンの役割は、エントリードアオープン・クローズだけで、PBLの車両装着や高さ調整はリムジンバスの運転手が行います。
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タラップ車走行時の注意点
タラップ車は高さがあるため、空港に基づいたルールを把握する必要があります。
過去に非自走式の3.8m以上のタラップを牽引するトーイング・トラクターが、PBB下を通過して固定橋にぶつけるアクシデントがありました。
幸い怪我人はいませんでしたが器物損壊や運転過失により、グラハン作業者は当面運転停止となりました。
ランプ内は沢山の車両が走行・作業し、航空機やPBBといった障害物も多く、CAB学科試験で求められた内容を活かす必要があります。
多くの空港ではPBBだけでなく、トンネルやターミナル間を結ぶ陸橋も、タラップ車の走行が禁止のため、他のGSE機材と比較してタラップ車には制限が多いです。
私もタラップ車を運転して何度も航空機に装着、離脱、走行経験がありますが、他の車両に比べると規定項目が多いので緊張感ありました。
幸い大きな事故の発生はありませんが、車体も特殊な形状で重量もあってバランスも悪いので、急カーブ時などは常に注意して運転する必要があります。
危険な車両ですがタラップ車の資格を取得すると、グランドハンドリングの技術も増して様々な作業を任される作業員としてグラハンの作業も熟知します。
グラハンは慣れた時こそ特に引き締めるべきなので、タラップ車だけでなく、どのGSEも常に緊張感をもって操作しなければなりません。
まとめ
今回は、飛行機に装着する階段付きタラップ車徹底解説!現役GHが解説する操作方法についてお伝えします。
結論を言います!
タラップ車はお客様が搭乗・降機するための機材で、自走式と非自走式の2種類があり自走式の操作には大型免許が必要となります。
もし、グランドハンドリングスタッフを目指すのであれば大型免許を取得したほうが作業内容も広がるので事前に獲得することをおススメします。
大型免許の他にけん引免許もあると、グランドハンドリングで必要な免許はほぼ満たされ、様々な作業に従事できます。
タラップ車は大きい分、飛行機装着の際はエントリードア一点のみ目視するだけでなく、全体を確認しながらエントリードアへとアプローチを行います。
グラハンの中では上級クラスの車両機材となり、社内資格認定後も常に初心の気持ちで操作しないと事故に繋がる恐れが高い機材です。
失敗を許す事ができない分、取り扱うことが困難な車両ですが、一人前のグラハンを目指す方は是非取得を目指して下さい。
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