スポンサーリンク
この記事は2023年5月30日に更新しました。
マーシャラー(飛行機誘導員)になるには資格や訓練は必要?
しかし、入社してグランドハンドリングの基礎作業内容を覚えた後に、ベルトローダー・ハイリフトローダー車のような社内訓練が始まり、インストラクター(上司・先輩)の下で練習が始まります。
【訓練内容】
- 座学(ペーパーテスト有り)
- 素振りの練習
- 車両での実機訓練
- 実機訓練
※ペーパーテストはありますが、基本的に間違っていたとして教官が後から教えてくれるので深刻に考える必要はありません。
知識がないと実機で対応できない為、座学は必須となります。
多くの方をはじめ、私自身もそうでしたがマーシャラーになるには、座学と素振りの練習から直々に行います。
2008年に私が入社したグラハン委託会社の上司が厳しく、一週間当たり約500~1000回程の素振りの練習をして、訓練中は腕がパンパンになる状態まで振りました。
マーシャリングの信号である【右旋回・左旋回・徐行】など、一通りの振り方を覚えると、飛行機を想定しての車両を使った誘導練習を行います。
飛行機は通常誘導路のセンターラインに沿ってマーシャラーに向かってきますが、飛行機の前輪(ノーズタイヤ)が駐機場の真ん中のライン上に乗らずに、ずれて向かってくることも多々あります。
この場合、マーシャラーが軌道修正するために左旋回・右旋回の信号を発信し、航空機のノーズタイヤをセンターライン上に乗せるよう微調整を行います。
私のインストラクターは鬼教官だったので、飛行機を想定した車両を使った訓練では、乱雑に車両で向かってくるので、
の連続で、毎秒修正を行ってました( ;∀;)
実際に飛行機はパイロットの技術が高いので、極端に左右に行ったりする事はないのですが、訓練なのでやむを得ない想定の中、当時は1時間半程振りっぱなしでした…
訓練中に注意されたことは、コックピットから見る角度と地上からのマーシャラーでは、飛行機の機種によって高低差があるのでパドルの表面がパイロットに見やすい角度で振り付けすることが大切と言われました。
家では、わざわざしゃもじを二つ購入して鏡に映る自分の誘導の振りを見ながら、練習したこともあって部活の自主練習みたいな感じでしたね。
振り方に誤りやおかしい点は毎回手直しの連続で、他のインストラクターの訓練を見てもらうと、違った振り方を教わるなど教官によって個性があるので、人それぞれ癖があります。
そのため、極力同じインストラクターに教わった方が後々の為にも楽です。
しかし、現実では担当教官と休日が異なったり、便が遅くなって訓練が出来ない時などの場合は、代理教官に確認してもらうことがあります。
インストラクターの元で航空機の実機訓練を10回程見てもらった後、問題がなければ晴れて独り立ちとなります。
機種毎(ボーイング737、767)によって資格が分けられボーイング737のマーシャラーの資格取得後にボーイング767の訓練を行います。
機種を多く扱っているグラハン会社では訓練期間も長くなり、1機種あたりの訓練期間は約2週間~1カ月程で仕上げていきます。
スポンサーリンク
マーシャラーの年収・給料ってどのくらい?
グランドハンドリングスタッフが行う作業の一環にマーシャラー作業あるため、就職するグラハンの航空会社や委託会社によって年収も大きく変わります。
グランドハンドリングスタッフの給料について具体的な金額を暴露しているので、以下の記事をご参照ください↓
よくマーシャラーだけをやりたいという声を頂くのですが、マーシャラーだけの仕事だけではなく、他のグランドハンドリング作業をするのが一般的です。
JALグランドサービスやANAエアポートサービスの大手の会社では、誘導課・客室課・搭載課のように作業内容も課ごとに分かれており、誘導課の場合はひたすらマーシャラー・プッシュバックを専属で行います。
私の所属した会社は大手ではなく、全ての業務に携わることが出来たので全体を把握し、作業の流れをより深めることが出来ました。
グラハンがするマーシャリングの注意点とは?
PBBの構造に関しての詳しい内容につきましては、こちらの記事を参照ください↓
飛行機がスポット(駐機場)に到着後、多くのお客様は席から一斉に立ち上がりハットラック(機内の荷物収納)から手荷物を出して、降機する準備に入る光景をご覧になったことがあると思います。
もし、マーシャラーのミスでPBBが装着できなかった場合、修正に伴う準備や作業時間に少なくとも5分以上のロスが生じる他、立っているお客様を再度座席に座らせるために機内アナウンスや呼びかけをおこないます。
飛行機が停止ラインよりも手前に止まらせた場合、飛行機を牽引するためのトーバーを飛行機に繋ぎ、逆に停止ラインよりもオーバーした場合もトーバーを繋ぎ押し出す作業(プッシュバック)作業をします。
ということは降機が遅れる他、お客様に手間を取らせるなど、CA(キャビンアテンダント)はお客様のクレーム対応に負われます。
指定された停止ラインに止めるだけの作業で単純だと思われますが、飛行機という巨大物体を自分一人の力で誘導するので、すごい緊張感と責任感を感じます。
マーシャラーは重要な役割を担っており、判断に誤ったり迷ったシグナルを送るとキャプテンにも迷惑をかけるので、大きくわかりやすく誘導をすることが大切で失敗は許されません。
マーシャラーの振り方やサインってどんなもの?
マーシャラーが覚える最低限の信号は以下の通りです。
- 機体をここへ。
- 前進
- 左旋回
- 右旋回
- スローダウン
- 停止に入ります。
- スタンバイ
- チョーク・オン
- 緊急停止信号
機体をここへ。 | |
前進 | |
左旋回 | |
右旋回 | |
スローダウン(徐行) | |
停止に入ります。 | |
スタンバイ
(この間に機体にノーズチョークをかけます。) |
|
チョーク・オン | |
緊急停止信号 | |
マーシャラーのサイン 出典:ICAO |
下記の動画は、飛行機がアプローチして停止するまでのマーシャラーのサインです。
気持ちエエくらいピッタリやね。
しかしslowdownのサインは知らんかった…。マーシャラーでも使うんやあのサイン。 https://t.co/RVrkIJmKdf— きたさん (@kitaichi_e5) August 22, 2019
マーシャラーは指定された停止位置に機体を誘導しなければならないのでコックピットに適切な信号を送ります。
例えばマーシャリングを行っている時に、風の影響で帽子やビニール袋が飛んできたり、さらには他社の車両が誤ってこちらに近づいてきた場合、両手を大きく上げて手を振るようにコックピットに向かって緊急停止を出します。
この緊急停止をかけることで、パイロットによっては到着後にマーシャラーに尋問される事があります。
そのため、緊急停止をかけることに躊躇する人もいますが、安全面を考慮した上では大事な事で、こちらの言い分に非がなければパイロットも何も言ってきません。
むしろ、危険を省みずに緊急停止を行う事は勇気があることで、安全第一で作業をすることは一番の優先順位です。
スポンサーリンク
2人で行う連携マーシャラーとは?
マーシャリングは通常一人で行いますが、航空機が駐機する場所が狭かったり、進入角度に難がある場合は二人でマーシャリングを行います。
二人マーシャリングをする際は、サブ・マーシャラーとメイン・マーシャラーと分担して航空機を停止位置に駐機します。
二人で連携してマーシャリングを行うので、事前にブリーフィングをして
タイミングを掴んでおかないと上手く止めることが出来ません。
下記の動画は、富山空港でサブとメインマーシャラーを配置した二人マーシャリングの動画です。
マーシャラーだけをご覧になりたい方は1:05からご覧ください。
サブ・マーシャラーの役割
サブ・マーシャラーはメイン・マーシャラーにベストなタイミングでパスを渡さないと、センターラインからズレが生じてしまい、修正に労力を費やします。
センターラインに旋回ラインがマーキングされているので、サブ・マーシャラーは航空機のスピードを考慮してメイン・マーシャラーに引き継ぐ必要があります。
メイン・マーシャラーの作業員によっては、マーキング前よりも気持ち手前で旋回させてパスしてほしい方もいるので、事前の打ち合わせが必要です。
個人的にはサブ・マーシャラーの方がメイン・マーシャラーのために上手くアジャストしなければならないので難しく感じます。
メイン・マーシャラーの役割
サブ・マーシャラーから引き継いだメイン・マーシャラーは航空機の誘導を譲り受け、指定された停止線へとマーシャリングをします。
メイン・マーシャラーの大変なことは、サブ・マーシャラーから引き継いだ場所から停止線までの距離が短いと修正も的確に素早く行う必要があります。
私が2人マーシャラーでビジネスジェットスポットを使用した際は非常に小さく、サブから受け継がれて場所から停止線までは約50m程しかありませんでした。
スポットによって大小ありますが、メイン・マーシャラー担当時に停止線までの距離が短いと修正が大変なので、サブとメイン共に呼吸を合わせた連携が求められます。
スポンサーリンク
出発マーシャリングとは
出発マーシャリングとはプッシュバックを必要せずに航空機が自走できるように、マーシャラーがサポート業務をします。
通常の旅客機ではプッシュバックを用いりますが、ビジネスジェットや自衛隊の機体は駐機したスポットから地上走行を行うので、問題なくブロックアウトできるようにサポートをするのが出発マーシャリングの役割です。
ビジネスジェットハンドリングにつきましては下記の記事を参照ください↓
全ての乗客、乗員の荷物を航空機に搭載し、航空機のチョークをリリースしてオール・ドアクローズになると、パイロットが管制塔に出発するための交信します。
ビジネスジェットを操縦するパイロットの立場からすると、狭い場所でブロックアウトする時は、周りの障害物とのクリアランス(十分なスペース)・突然車両の出現などマーシャラーのアシスタントがあるだけで不安材料を軽減ができます。
マーシャラーは航空機正面に向かって離れて立ち、出発シグナルを出します。
出発マーシャリング手順
航空機から離れた状態で出発マーシャラーを正面にスタンバイし、機体から見て右側のエンジン(NO.2)からスタートし、次に左側のエンジン(NO.1)の順にスタートします。
コクピットからハンドシグナルで2の合図が出ると、マーシャラーも左手で2を出しながら真上に挙げて、右腕は真上に挙げて大きく円を描くようにNO.2エンジンが始動してる表現をします。
NO.2エンジンが完全に回り切れば、次にコクピットからハンドシグナル1が出るので、左手は1を出しながら真上に挙げ、先ほどと同様にNO,1エンジンを始動します。
全てのエンジンが始動するとパドルを所持し機体に向けてスタンバイ合図を出します。
コクピットが全ての項目に問題ないと確認後、機体が自走する瞬間にランディングライトが点灯します。
これは機体が発進する合図で、出発マーシャリングの作業員は直進信号を出します。
出発マーシャリングは機体を若干前進後に旋回方向(左右)に合図を出して、周りの障害物に十分なスペースに問題ないかウイングウォッチをして航空機を見届けて完了します。
下記の動画は少しだけですが、出発マーシャラーをしてるシーンがございます。
最後に機体が旋回するのでジェット・ブラストを浴びないように素早く退避します。
※ジェット・ブラストとは航空機エンジンの後方から排出する高温噴射のことで、小型機とは言えその威力は人が飛んでしまう他、コンテナや大型ダンプも吹き飛ぶ程のパワーがあります。
3基エンジンを所有する場合の出発マーシャリングは
- 真ん中エンジン(NO.2)
- 右側エンジン(NO.3)
- 左側エンジン(NO.1)
の流れでエンジン始動開始となります。
4つエンジンを含む機体は、2つエンジンを所有する機体同様で一番右側のエンジン(NO.4)から順にスタートします。
スポンサーリンク
現役グラハンが語る初めてのマーシャラー体験談
私が初めて誘導した機種はA320という小型機の航空機の誘導をし、最初はとても緊張して終了時は手が震えてました。
当時は20歳で小さい頃から夢だったマーシャラーになれた時は本当に嬉しく、注目されるポジションに憧れてたこともあり遣り甲斐をすごく感じました。
鬼教官の元での練習は辛かったですが、元々マーシャリングをする為の意欲が強い事もあり、家ではしゃもじを2つ買って練習にも励んでました(笑)
マーシャラーに憧れている方は元々興味もあり、学習する傾向も早いので訓練期間は短く独り立ちが早いかもしれません。
ちなみに私は初めての実機で褒められましたが、実機に入るまでの訓練が3週間以上かかりました。
マーシャリング対応は今後は機械がメインなの?
現在の主要空港ではVDGSという機械を用いての誘導を行っているので、昔と比べてしまうとマーシャリングをする機会は減少しました。
ですが空港のスポットはPBBがあるターミナルスポットとPBBがないオープンスポットの2種類あり、基本的にオープンスポットにはVGDSが設けられておりません。
VDGSの内容について詳しい記事はこちらをご参照ください↓
よってマーシャリングが完全に無くなるわけではなく、機械が不具合起きた際に手動で対応できるように一定の間隔でマーシャラーのリカレント訓練もあります。
マーシャラーに憧れている方は、現在でもマーシャリングをする機会があるのでご安心くださいね。
まとめ
今回は、マーシャラーになるには資格が必要?飛行機誘導員のサイン・給料を徹底解説しました。
結論を言います!
飛行機の誘導員はグランドハンドリングスタッフが行い、民間等の資格は必要はありませんが、訓練を重ねた上で社内資格が発令しないとできません。
また、羽田空港や関西空港など拠点空港では、VDGSという機械によって飛行機の誘導を行いますが、全ての駐機場にVDGSがあるわけではないので、完全にマーシャラーが無くなるわけではありません。
マーシャラーは昔からグランドハンドリングスタッフの中で一番注目される業務で、飛行機の誘導に憧れてこの業界に参入する方が多く、私もその一人です。
マーシャリングを行うまでの間に、素振りや各種信号を覚える必要はありますが、膨大な量はそこまで多くありません。
大事な事は、いざという時に緊急停止信号だせるかどうかです。
実際に自分の力で航空機を誘導することは、本当に感動するのでマーシャラーを目指す方は、諦めずに挑戦してくださいね!
スポンサーリンク