飛行機の翼端監視員(ウイングウォッチ)がする合図と航空機牽引(トーイング)の補助作業

翼端監視員航空業界

 

この記事は2023年5月30日に更新しました。

こんにちは、みのるです。

皆さんは飛行機が到着する際に、駐機場(スポット)の両端に立つ作業スタッフを見たことありますか?

 

飛行機の到着・出発時は翼端監視員(ウォッチマン)が必要で、周りの航空機や障害物に当たらないか監視するグランドハンドリングスタッフです。

 

一言で翼端監視員と言ってもイメージが湧かないですよね??

 

 

例えば・・・

 

『翼端監視員の合図ってどんなものがあるの?』

『飛行機の牽引する時も翼端監視員を配置する理由は?』

『翼端監視員(よくたんかんしいん)って何か特別な資格が必要なの?』

 

など、グラハン業界に携わらない人からしたら、分からないですよね?

私もグラハンをやるまでは、翼端監視員がどんなことをするかよくわかりませんでした。

 

 

簡単に言うと・・・

 

 

翼端監視員の任務は、クリアランス(安全)が取れた時に、飛行機を操縦するパイロットやコーパイに向かって、右片手を上げて👍合図を出し、左手は左右に動かします。

飛行機の牽引する時は、牽引する運転者席からでは飛行機の後方部分見えない為航空機同士や障害物に接触しないよう翼端監視員を配置します。

重要な任務である翼端監視員は、主な資格は必要ありませんが社内資格が必要です。

 

 

この記事では、実際に翼端監視員やトーイングサポートでの業務に携わった私が

・グランドハンドリングスタッフがする翼端監視員

・グランドハンドリングスタッフが行うトーイング

・グランドハンドリングスタッフがトーイング作業する上で大切な事!

・トーイング完了後にする確認事項!

 

について解説します。

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グラハンが行う翼端監視員(ウォッチマン)とは

飛行機

グランドハンドリングスタッフの業界に入ると、初めてやるのが翼端監視員です。

人によっては、ウイングウォッチ・ウォッチマンとも言います。

 

翼端監視員は一番長い翼の端を監視するために配置します。

飛行機を操縦するパイロットとコーパイからは前方・左右は見えても、後方確認は出来ない為、操縦席からでは視界が悪いです。

飛行機の左右にある主翼(しゅよく)部分が一番突飛してるので、周りのGSE機材(車両機材)や他の航空機に接触しないか確認し、コクピットに合図を出します。

 

では、翼端監視員の合図の種類ついて次に解説します。

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翼端監視員(ウイングウォッチ)の合図

翼端監視員

翼端監視員の合図は、大まかに3種類あります。

    1. クリアランスOK合図
    2. スタンバイ合図
    3. 緊急停止合図

順番に解説します。

翼端監視員の合図① クリアランスOK

飛行機が到着する駐機場に障害物等がなく、安全に支障がなければ右片手を垂直に上げて👍合図を出し、左は左右に動かします。

これは周りに障害物がなく、クリアランスが取れているので、駐機場に入って問題ないという合図となります。

 

キャプテンによって翼端監視員に理解したことを合図する為に、👍を返して下さる方もいます。

飛行機が駐機場に入ると同時に、翼端監視員はマーシャラー(飛行機の誘導員)に向かってクリアランス合図を出します。

 

マーシャラーの内容はこちらの記事を参照ください↓

翼端監視員の合図② スタンバイ合図

スタンバイ合図は両腕を45度に伸ばした状態で、パイロットやコーパイに一時停止して頂くための合図となります。

イメージとしては、緑色のベストを着たチョークマン↓です。

チョークマンとは、飛行機の誘導員に対して停止ラインの場所を補佐したり、飛行機駐機後タイヤにチョーク(車輪止め)をかける人のことです。

 

例えば、前便の出発機が(スポット)駐機場から完全にブロックアウト(駐機場から出れてない)されていない場合や、プッシュバックしてる最中にクリアランスが取れてない時にスタンバイ合図を使います。

翼端監視員が飛行機の操縦席に向かってスタンバイ合図をだし、問題がなければクリアランス合図へと切り替え飛行機をブロックインさせます。
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翼端監視員の合図③ 緊急停止合図

緊急停止合図は、両腕を上にあげて大きくバイバイするイメージです

みのる
みのる

私はグラハン10年以上行ってますが、ウォッチマンが緊急停止をかける姿は、あまり見たことがありません。

 

翼端監視員が航空機にクリアランス合図を出している最中に、車で走行する人が駐機場をいきなり横切ったりした時に発令します。

他にも、強風時に大きなゴミ袋が駐機場に飛んできた場合など、航空機のエンジンに入る恐れがある場合は、緊急停止合図かける時もあります。

 

ここまでは合図の解説しましたが、次はトーイング時の翼端監視員の役割について解説します。

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飛行機トーイング時の翼端監視員

飛行機 トーバー

飛行機のトーイングを行う時は通常下記の3人で行います。

  1. トーイング運転操作をするタグマン
  2. 飛行機の操縦席で緊急時に停止する為のブレーキマン
  3. 翼端監視員

今回はトーイングトラクターを使用した設定で解説しますが、トーバーレス・トラクターの場合はやり方が異なりますので、あらかじめご了承ください。

 

プッシュバック同様に、ノーズギア(タイヤ)が動作しないためのステアリングロックアウトピンをセットし、航空機にトーバーとトーイングカー(車両)を接続します。

 

航空機にトーバーを装着させる方法は以下の記事を参照ください↓

 

トーイング中は航空機に電力が必要の為、GPU(地上電源)の接続のまま状態は牽引できないので、トーイングトラクターに付随してるGPUを航空機に接続します。

 

通常GPUは115V・400Hzの交流周波数と決められており、電力が一定数値まで到達してから供給開始となります。

 

トーイングカーからコックピットに必要な電力が供給され、ブレーキマンはトーイングの為のセットアップ(準備)を行います。

 

全ての項目を確認後に、機内にいるブレーキマン立ち合いの元でエントリードアクローズを行い、パッセンジャー・ボーディング・ブリッジを離脱します。

 

 

 

また、タグマンと翼端監視員はトーイング前に以下の項目を確認します。

  • 機体の外周点検
  • 傷や凹み
  • オイルリーク
  • 周りのゴミの有無

最後に飛行機のタイヤにかけたチョークの回収を行い、トーイング開始のため定置に配置します。

なお、このチョークはトーイング先の駐機場で使用する為、トーイングカーに搭載します。

 

次にトーイング開始時の翼端監視員について解説します。

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トーイング時の翼端監視員のやり方

フィリピン航空

翼端監視員は指定の場所にスタンバイし、タグマンが管制塔と更新後に、トーイングカーの上に付随する黄色回転灯が点灯します。

 

周りに障害物や走行する車両に影響がなければ、翼端監視員はクリアランスOK合図をタグマンに向かって出します。

翼端監視員はタクシーウェイライン(誘導路)の場所を、タグマンに示すように合図またはライトで示し、タグマンは誘導路に向かって舵を調節します。

 

翼端監視員の重要な点は、運転するタグマンから見える位置に立って合図することです。

 

タグマン側からでは目の前が航空機で視界が悪く、翼端監視員が常に確認できる場所にいることで安心感を持たれます。

航空機がタキシーラインと並行になり、トーイングカー停止後に翼端監視員は車両に乗り込み、別の駐機場へと向かいます。

 

トーイング中のタグマンは、グランドコントロール(地上管制)とコンタクト取りながら、指定されたルートで運転するため忙しいです。

 

トーイング中の翼端監視員はトーバーの接続部分、他の航空機とのクリアランスに問題ないか確認と同時に、グランドコントロールの内容をメモします。

 

指定された駐機場に近づき、航空機の垂直翼(後方の翼)がスポットまで入ると、翼端監視員は車両から降機し、指定された停止ラインまで誘導を行い車両を停止させます。

 

次にトーイング作業後の翼端監視員作業について解説します。

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トーイング作業後のウイングウォッチ

ソラシドエア

トーイング完了後、先ほどトーイングトラクターに乗せたチョークをタイヤにかけて、GPUリリース作業とトーバーを離脱させます。

 

PBBがない沖スポットでは、タラップ車もしくは非自走のステップでエントリードアに装着させ、ブレーキマン降機後再度ドアークローズを実施して離脱します。

 

トーイング完了後、機体に破損や不具合がないか外周点検を行い、ステアリングロックアウトピンの回収をして終了となります。

通常ステアリングロックアウトピンとは、トーイングトラクターに常備されており、ストラップに「REMOVE BEFORE FLIGHT」と記載されております。

ステアリングロックアウトピン

ステアリングロックアウトピン

みのる
みのる

私自身一度回収を失念し、翌日の出社後上司に呼び出され、担当した3人が厳重注意を受けたことがあります。

ステアリングロックアウトピンの回収を忘却することは、航空機のノーズギアが操作できなくなるので、大惨事になるほど大きなヒューマンエラーです。

 

ステアリングロックアウトピンの有無は必ず3人で確認します。

トーイングが発生する理由

トーイングが発生する大半の理由が固定スポットを空けさせるためです。

例えば、航空機が固定スポットに到着して深夜駐機する場合、このあと到着する飛行機が固定スポットを利用する時は、沖スポットに移動させる必要があります。

 

航空機が深夜駐機する場合、固定スポット(PBBあり)⇒沖スポット(PBBなし)に移動させ、翌日の早朝便の出発時刻までに沖スポット⇒固定スポットに移動を行います。

 

『だったらはじめから固定スポットでなく、沖スポットに直接駐機させればよいのでは?』

と、疑問に持たれますよね?

 

利便性とコスト面を考慮すると、沖スポットよりも固定スポットの方が優れているのです。

 

沖スポットの場合、バスに乗ってターミナルまで移動する所要時間が生じ、バス料金も航空会社側の出費となります。

出発・到着時は固定スポットを利用した方が航空会社にとって割が良いのです。

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トーイングとプッシュバックの違い

トーイング

トーイングとプッシュバックを誤解をする方がいます。

トーイングとは一言で言うと、飛行機を牽引することで、駐機場から別の駐機場へ飛行機の牽引する作業のことです。

 

プッシュバックはスポットから航空機が自走できるタキシーウェイ上(誘導路)まで、押し出す作業を言います。

トーイング・プッシュバック共に翼端監視員は必要です。

まとめ

今回は飛行機の翼端監視員(ウイングウォッチ)の合図と航空機牽引の補助作業についてお伝えしました。

 

翼端監視員は単純な仕事に思えて、大事な機体を損傷させないよう重大な役割を担っており、状況によって合図も異なります。

 

目の前に航空機がいたり、障害物があった状態でクリアランス合図を出すと、大きな事故に繋がる恐れがあります。

 

トーイング時の翼端監視員は、運転するタグマンに向かって見える位置に立つことや、わかりやすく合図する必要があります。

 

トーイングに集中するタグマンを、補佐役の翼端監視員がサポートし、タグマンを安心させることも大切な仕事です。

 

シンプルな作業に見えますが、翼端監視員の業務は事故を防ぐための大切なポジションです。
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