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この記事は2023年5月30日に更新しました。
ハイリフトローダー車とは?どんな免許がいるの?
※ULDとは(Unit Load Device)の略で、飛行機に搭載するための専用コンテナ及び、パレットを言い、お客さまから預かった手荷物コンテナ、貨物コンテナ、パレットをハイリフトローダー車を使用して搭載を行います。
※GSE機材とは、空港内や飛行機の作業で、グラハンや整備士が使用する車両機材のことです。
コンテナには、LD-3・LD-4・LD₋8など様々な種類があり、カーゴを専門とする貨物機では沢山のコンテナを使用します。
ULDパレットは、荷物を載せるための荷役台でコンテナでは搭載できない物をパレットを使用して搭載します。
パレットを使用する時は車両や大型貨物を搭載する時に使用する時が多いです。
ハイリフトローダー車は車両自体が大きく、他のGSE機材と比較すると確認事項が多い車両で操作レバーも多く、高さもあるのでグランドハンドリングの上級車両となります。
ハイリフトローダー車の各部分名称
- 運転する場所及び操作盤がある場所・・・サブデッキ
- コンテナを上下昇降する部分・・・メインデッキ
- ハイリフトローダー車の後方(テール)部分・・・アフターデッキ
ハイリフトローダーの荷台にはULDが流れるように、ローラーがそれぞれのデッキに備わっております。
サブデッキの操作盤にある操作レバーはメーカーによって約5~8個あり、手前のレバーから手前のローラーが動く仕組みとなっており、ULDが流れるように操作します
ハイリフトローダー車のULD操作方法
航空機のカーゴルームから手荷物・貨物コンテナ及びパレットを取り下ろす手順
航空機カーゴルーム ⇒ サブデッキ ⇒ メインデッキ ⇒ アフターデッキ
反対に、出発分の手荷物や貨物のULDを搭載手順では
の順にULDを搭載します。
到着ULDを取り卸し後は折り返しの出発ULDを搭載しなければならず、台数が多ければスピードが求められ、慌てて行って確認行為をしないと飛行機に傷を負わせてしまい、メンテナンスのため飛行機の遅延が発生する恐れもあります。
私の場合は他のGSE機材よりも、ハイリフトローダー車は特に習得するまでに時間を要しました。
車体が大きいので車両通行帯の運転は、カーブを曲がる場所や、交差点での走行時は、曲がる際に後方テール部分が大きく横にブレる為、他の車両に注意しながら運転します。
運転席は前方右部分で、地上からはしごを通じて運転操作場へと向かい、車高が高い状態で運転を行います。
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ハイリフトローダー車の訓練開始時期と期間
グラハン会社によって訓練開始時期が異なりますが、自社で全てのグランドハンドリング業務を行っている会社は、入社して約2、3年後にハイリフトローダー車の訓練を行います。
大手のグランドハンドリング会社(JALグランドサービス)で、搭載課に配属すると入社して直ぐにハイリフトローダー車の訓練を行います。
私の場合は入社して約2年後にハイリフトローダー車の資格訓練が始まりました。
約2カ月間程の訓練を経て独り立ちとなりますが、飛行機を取り扱う機種多ければ、機種毎に訓練を行うので訓練期間も長くなります。
しかし、基礎さえ学習すれば飛行機の機種が異なっていても操作方法はほぼ一緒のため、基礎を学習するまでが一番大変ですが、スキル的にも熟練することが大いに期待されます。
グランドハンドリングスタッフの人が、ハイリフトローダー車の訓練を行う上で、第一の関門だと私は思います。
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ハイリフトローダー車の乗車前点検
ハイリフトローダーだけでなく、どのGSE機材でも乗車前に必ず行うのが360度外周チェックです。
ハイリフトローダー車は全長が長く他の車両に比べ、タイヤも沢山あるので釘や石が挟まってないか入念に確かめ、ULDを搭載するローラー部分に物がないか確認します。
またアフターデッキ(テール箇所)には、車体の外付け左右に操作できるパネル版があります。
パネル版は蓋つきのため走行中は基本閉めていますが、前の作業員が使用後に開いたまま、現場を離れる事が多く、走行の際に妨げにならないよう必ず閉めます。
車両に施されているチョーク(車輪止め)を外し、サブデッキの操作席に移動しエンジンをかけて、アウトリガーを収納し発進となります。
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ハイリフトローダー車を航空機に装着
飛行機がスポットにプロックイン(到着)し、荷物が搭載されるカーゴルームとハイリフトローダー車を対称になるようアプローチします。
カーゴルームの3m手前でハイリフトローダー車を一時停止し、サブデッキ部分をカーゴルームと同じ高さまで上昇させます。
サブデッキ上昇後、周りに作業員がいないか指差呼称を行い、カーゴルームに徐行しながら近づきます。
飛行機に対してハイリフトローダー車がずれてると、ULDの取り卸し・搭載が出来ず、作業に支障をきたします。
また、作業員も取り卸し用のULDドーリーをスタンバイしてる状況なので、ハイリフトローダーの装着に失敗した場合は直ぐにやり直しを行います。
ハイリフトローダーとカーゴルームの間にコブシ一つ分の間隔を開けて装着して問題なければ、ドーリーを牽引する作業員にOK合図を出してハイリフトローダー車のアウトリガーを張ります。
※アウトリガーを張る際は、既にカーゴルームとハイリフトローダー車の高さが、ほぼ一緒のため、接触防止の為に一度サブデッキを下げてから張ります。
コブシ一つ分の間隔を確保してるので航空機に接触することはありませんが、風の影響で飛行機が揺れ動く場合はコブシ1.5分の距離を取ります。
アウトリガーはハイリフトローダー以外に、パッセンジャータラップ車やフードローダー車にも備わっております。
アウトリガーを設置し忘れと、車体に耐久性が無くなり不安定となるため、必ず設置しなければなりません!
Power Drive Unit: 動力駆動装置
PDU(パワー・ドライブ・ユニット)とは、貨物室内にあるULDを操作するためのローラーやストッパーロックを操作するための装置です。
ハイリフトローダー車を飛行機に装着後、カーゴルーム横にアクセスパネルがあり、フォワードカーゴルーム・アフターカーゴルームそれぞれに設けられてます。
以下はグラハンスタッフの右手でPDUを操作して、カーゴルーム内をULDを動かしております。
今朝も飛行機の周りではグラハンスタッフの皆さんが航空機専用のコンテナなどをハイリフトローダーと呼ばれる特殊車両で機内に積み込みしてました。
普段乗る旅客便のお腹には私たちがカウンターで預ける手荷物以外にも工業製品や生鮮食品などの貨物も載ってます。貨物業界ではベリー便と呼んでます。 pic.twitter.com/CE2BSAf6Mh— 中部国際空港セントレア (@Centrairairport) November 27, 2019
ULDを動かす操作するレバーは、前後左右並びに斜めにも操作する事ができますが、斜めに操作する事はパレット以外ありません。
ULDが飛行中に動かないようストッパーロックがされてるので、固定や解除の切り替えも基本的にPDUで操作します。
イレギュラーでPDUが使用できない場合、ULD搭降載(とうこうさい)ができないので、異常が発生したら直ぐに整備士に報告します。
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到着ULDコンテナ取り卸し
ハイリフトローダー車を飛行機に装着後、機体に備わるPDUの電源ONにしてULDの取り卸し作業を行います。
到着時でカーゴルームに搭載されたULDは、一番最初にお客様の荷物が入った状態でULDが取り卸しできるように積み込みされています。
基本的に右手でPDUのレバーを操作し、左手でハイリフトローダー操作盤のレバー操作を行います。
ULDをカーゴルーム⇒サブデッキ⇒メインデッキへと移動させて、取り降ろしていきますがこの間にお客様も同時に降機しております。
ULDを降ろしながら高さ調整を行わないと取り卸しすることができず、段差が生じたまま強引に取り下ろすと中身の荷物や貨物が荷崩れします。
カーゴルームの高さに注意を計らいながら、ULDを1,2台づつ降ろしメインデッキまで移動昇降でアフターデッキまで下降します。
メインデッキがアフターデッキ部分と同じ高さまで下降後、メインデッキ⇒アフターデッキにULDを移動させ、スタンバイするドーリーに積み替えさせます。
アフターデッキまでULDを移動すれば、他の作業員がULDをドーリーに積み替え操作をしてくれますが、残りのULDが貨物室にあるため直ぐにメインデッキを再上昇させます。
人員が少なく車両機材に余裕がない場合は1人で搭降載を行う必要があるので、取り卸しを行っていないフォワードまたは、アフターカーゴルームのULDの取り卸しを行います。
到着ULDを取り卸し後は、出発分の貨物ULDを搭載するので次に解説します。
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出発ULDコンテナ搭載
出発のULDは、基本的に貨物から積み込みを行います。
貨物を搬送する担当者から無線を通じて搭載台数及び、搭載ポジションの情報知ることで、搬送~搭載までの間にストッパーロックを固定したり、搭載しないカーゴルームのドアクローズを行ったりと、貨物ULDが到着するまでにやれることを行います。
機側に到着した貨物搬送担当からLDシートを受け取り、ULDの搭載ポジションを確認をします。
※LDシートとは、Loading Sheetのことで、飛行機が飛行中にバランスを崩さないように、あらかじめ計算された搭載指示書のことです。
LDシートがない状態での搭載は原則禁止であり、確認なしの状態でULD搭載を行うとローダーとして失格となり資格をはく奪される恐れがあります。
ULD搭載時は必ずローダーをはじめ、機側作業責任者及び貨物担当もLDシートを見ながら搭載を行い、誤搭載が発生しないよう全員でチェックします。
ULDコンテナの中身によっては1トン以上する重量の貨物もあるので、航空機のカーゴルームに数台搭載するだけで航空機が沈みます。
全ての貨物を搭載後に、お客様の預け荷物ULDをドアサイドに搭載します。
※ドアサイドとはカーゴルームをオープンし、目の前に見えるポジションのことです。
基本的にドアサイドは、プライオリティのバゲージや優先バゲージ(ベビーストローラー)が入ったULDを搭載され、到着時に一番早く取り降ろし、出発時は一番最後に搭載します。
B767の場合、フォワード・アフターカーゴルーム共に横1列のみの合計15台程のULDを搭載することが出来ます。
B777の大型機になると、ULDが2列計30台程搭載ができる為、搭載するためのスピード力が大いに求められます。
時間内に搭載できないと、定刻出発ができず定時性に繋がってきます。
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全ての貨物及び預け荷物コンテナ搭載後の確認
貨物、手荷物ULD両方を搭載完了後、ローダー及びグラハン作業員の最低二人でLDシートと照らし合わせながら、搭載ポジションを確認します。
本来は機側作業責任者と確認する事が望ましいのですが、機側作業責任者も他の確認等を行って確認出来ないので、その場合はローダーと別の作業員と一緒に確認を行います。
この時点で、出発時刻まで残り10分前で実質最終チェックとなります。
LDシートに記載されるコンテナナンバー及び搭載ポジション、ULDコンテナが飛行中に動かないようにストッパーロック、PDUの電源オフなど確認する項目が多数あります。
時速800キロ以上で飛行する航空機は、ストッパーロックを確実に施さないと飛行中に動くため、確実な確認を行います。
万が一ストッパーロックを失脚したまま乱気流に遭遇すると、重大事故に繋がる恐れが生じるので、確信を持てるようにチェックをする必要があります。
全ての項目を確認して、問題なければハイリフトローダーを離脱させてカーゴドアクローズとなります。
まとめ
今回は、飛行機に預け荷物・貨物コンテナを積み込みするハイリフトローダー車ついて解説しました。
結論を言います!
ハイリフトローダー車は他のGSE機材と比較して全長も横幅も大きく、レバー操作も多いのでグラハン作業では上級クラスに値します。
ULDの取り卸し・搭載時は、常に高さに注意しないと飛行機に損傷を負わせる事にもなり、最悪コンテナを落下させる恐れがあるので集中力を持って作業を行います。
出発時の搭載はLDシートを確認しながら行わないと、誤搭載の発生となり飛行機の中心重量が安定せず事故に繋がります。
PDUを操作しながらハイリフトローダーのレバーを操作し、LDシートも確認しなければならず、ULD搭載は非常に大変な作業です。
責任重大で覚える内容が多いハイリフトローダーは、学習するまでに悪戦苦闘しますが独り立ちすると仕事を任される感じです。
私の経験上、ハイリフトローダーは苦労した分、今となれば非常に楽しい作業だったので、グラハンを目指すのであればハイリフトローダーも是非経験していただきたいです。
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